「凄い時代」読了、その3

凄い時代 勝負は二〇一一年

凄い時代 勝負は二〇一一年

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に続いて、今回は個人の仕事についての覚書です。

水平分業から工程分業へ(p.84)

1990年代には、世界経済がグローバル化すれば、繊維や雑貨や一部電機製品などの労働集約的な産業がアジアなどの新興工業国に移動する一方、資本・技術集約的な産業は日米欧の先進工業国に集まる、と考えられていた。

 例えば中国は、「年率7.5%の経済成長」を目標として掲げた。その程度の成長をすれば労働需給が均衡し、労働力の豊富な内陸部にまで工場が立地する、と見たのである。
 ところが、21世紀に入ってからの現実は年々10%を上回る経済成長が続いたのに、労働力は過剰であり、工場は沿海部に貼りつき、地域格差は拡大している。労働集約的な「産業(業種)」でなく、資本集約的な「工程」が中国に移ってきたからである。

なるほど。iPhoneの生産とか考えるとわかりやすいですね。

巨大企業は、大きく分けても八つになる工程を、それぞれ最適の条件の地域(国)で行うようになった。

八つの工程とは

①ビジネスモデルの作成
②技術の収集開発
③製品設計
④部品製造
⑤製品組み立て
⑥製品流通
⑦マーケティング
⑧金融操作

このなかで④⑤が資本集約型で新興諸国へ、①②③と⑦⑧は労働知識集約型で先進地域へふりわけられます。

「中核100人」が盛衰を決める(p.87)

水平分業から工程分業への変化は、先進国の社会をも激変させた。ここで企業や都市の盛衰を決めるのは、ビジネス・モデルや技術開発、マーケティングの中核となるごく少数の人々である。

例として「関西歌舞伎」をあげ、京都や大阪の役者や地方がみな東京に居住するようになり、支持職種も関連産業も消滅したそうです。これはあらゆる分野でおこりつつあり、

今や先進地域の都市間競争は中核100人の争奪戦となっている。アメリカの経済学者のリチャード・フロリダ氏は、これを「クリエイティブ・クラスの争奪」と呼んでいる。

ただこのクリエイティブ層は寿命が短いので(最盛期が10年とか)、高率の累進課税を課すのは酷であるとし、税制の発想を変える必要があるとしています。

政治家はクリエイティブ層を呼び込みたいと思っているかも知れませんが、一般の人はどうかというとGoogleのバスの件を思い出しました。

工程分業のせいで、別にGoogleがあっても近辺に仕事が増えるわけではないので(ましてGoogle社員になれるわけもない)地元民にとってはむしろ迷惑と思われてます。

すべてを変えた生産手段と労働力の融合(p.90)

 知価革命の進行は、社会全般にもっと大きな変化を生んでいる、その最大のものは、労働力と生産手段の融合である。
 この巨大な社会現象についての詳述は別の機会に譲るが、実はこれが世の中の全てを変えている。その一例は都市の構造と住居の選択である。
 近代工業社会は、工場や店舗などの生産手段と労働力の分離によって生まれた社会である。そのため、都市計画においても、それを具現化しようとした。
 都市部にはオフィスと商業施設を集中させ、住宅や教育機関は郊外に配置した。工場は臨海部や大河川流域の工業専用地区に集めた。そして各地区の間に地下鉄や高速道路でむすぶ移動性の高い都市を作り上げた。鉄と油を大量に使う都市構造である。

 だがそれも、今や大いなる無駄になっている。

 要するに、知価社会においては生産手段と労働力とは限りなく融合する。このことは産業革命以来の近代工業社会との決定的な違いである。
 したがって、都市の構造も、コミュニティーのあり方も、家庭の状況も、決定的に変わりつつある。
 知価創造に関わる人々は、何よりも自分の好きなところに居住し、好きなところで働き、好きな状況で刺激を受けて生産手段たる知識と経験と感性を補充する。

ここで、大都市の都心にも住居や大学が建ちはじめ、一方で巨大国際企業の本社機能が地方都市に分散してきている、としています。その巨大国際企業の例にはもちろん「検索のグーグルはカリフォルニア州」とあります。

がしかし!「知価創造に関わる人々は、何よりも自分の好きなところに居住し、好きなところで働き」そもそも会社に出勤したくないwwwですよね。

この記事で指摘されているダサさを拒否して解雇されたともいえます。

すると「なんちゃってボヘミアン」みたいに、夜だけは芸術家を気取ってダウンタウンナイトライフをエンジョイし、朝がくるとサラリーマンまるだしの社畜に戻り、いそいそとグーグル・バスに乗り込む……この欺瞞に満ちたエリートたちの姿を、筋金入りのボヘミアンたちは「イタイ連中だ」と揶揄しているわけです。


一方で、米ヤフーの在宅勤務禁止など揺り戻し現象も起きてます。


まあ日本は、東京一極集中が加速しているし、在宅勤務なんて夢のまた夢ですが、次はこの本を読もうと思います。

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

もちろん堺屋氏の「労働力と生産手段の融合」についての著作がでたら、絶対読みたいと思います。